僕は、プロジェクトを立ち上げ実行する際に、多くのアーティストと関わります。また、アーティストにコーチングのような形で良いコンディションで作品がつくれるようにアドバイスをします。こういった場合のアーティストに与える影響とアーティストに行う介入に関するスタンスについて表明していきます。

僕のアーティストとしての欲望は、文化の生成されやすい環境をつくることです。すなわち、その欲望は単独で達成できることではなく、多くの人たちと関わりながら達成していくことになります。僕の欲望はあくまで環境をつくることです。僕の設計したプロジェクトの中でアーティストが制作した作品はプロジェクト自体の成果ではありますが、基本的にはそれを制作したアーティスト自身の成果です。

「プロジェクト=制作の条件の価値」と「作品=作品の価値」。

この前者を僕が欲しいもので、後者はそれを制作したアーティストが受けとるべきものだと考えています。

「良い作品をできる」という点で僕自身と関わるアーティスト双方にメリットが発生する。結果的に利益を共有可能になる。これが僕の他のアーティストと関わる時の理想的な関係性です。

しかし、プロジェクトを企画し、運営する立場はどうしてもそこに権力が発生してしまいます。この権力の問題はどうやっても逃れることができません。そこで、僕は関わるアーティストに事前にこういったことを伝えます。

「僕は自分のプロジェクトであなたたちを最大限利用しようと思う。だからあなたたちも僕を最大限利用してくれ」と。

「権力が発生し、搾取が発生しうる可能性」を提示する。それを理解した上で関わるかどうか判断してもらう。これが僕の他のアーティストと関わる時のスタンスです。

また、アーティストに対してアドバイスという形で介入する時、そのアドバイスは常にその言葉によってどう動くか期待していません。

アドバイスは、一方的に、「テキトー」にこちらから言葉を投げる行為だと考えています。言葉を投げた後の選択、投げてた言葉通りに実行する。部分的に採用して実行する。実行しない。いずれの判断も投げた言葉へのレスポンスです。

だからその選択を尊重したいと思っています。

こうしたスタンスは僕が運営するプロジェクト「ドリル」の実践のなかで得たこれまでのフィードバックを元に構築したものです。

「ドリル」は、試行錯誤、評価、フィードバックを繰り返し行なっていくプロジェクトです。

そのため、そのスタンスは今後も更新せれていきます。(既にこの文章自体、更新されています。)

またこうしたスタンスを文章に書いて残す意味は、自分自身に基準をもうけることにあります。完璧にのスタンスを全うすることは、状況によって難しくなることもある。だからこそ、それが確認出来るように立ち返るポイントとして設定して書いています。

カワムラ　シュウイチ

（2020年4月7日、東京に緊急事態宣言がしかれた日に。/2020年4月20日一部更新)